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組合相談窓口

東京高裁 退職強要・人権侵害裁判

裁判闘争通じ雇用守る!
組織的違法行為証明を!

 5月14日、東京高等裁判所822法廷において第1回IBM退職強要・人権侵害裁判が行われます。報告は次号以降でおこないますが、現在の労働裁判は、JAL裁判でみられるように労働者にとって逆風が吹いています。
 しかし、IBMで今後行われるリストラに歯止めをかける意味でも高裁を舞台にした新たな闘いは、それ自体が意義のあるものと確信しています。みなさんの力強いご支援をお願いします。

▲裁判官の姑息さ▲

 IBM退職強要・人権侵害裁判の第一審は、すでに本紙面でお知らせのとおり、2011年12月28日に東京地方裁判所(以下、「東京地裁」という)から、原告の請求が全て棄却されるという裁判官としての公平性、客観性の微塵も無い不当判決でした。
 この判決は会社の言い分を鵜呑みにし、特に原告の所属長が足を踏みならし原告を威嚇している音や「貴様!」呼ばわりしている声の録音証拠に対して「録音していることを隠して、原告が被告側証人(所属長)を挑発した」と決め付けるなど、原告に対する悪意すら感じさせる異様なものでした。
 また、裁判官が和解のテーブルで「あなたたちの状況は、私も裁判所の職場で似たような経験をしているのでわかっているので何とかしてあげたいが、裁判所の判断は私とは別物なので理解してもらいたい」というような発言がありました。
 判決内容と照らし合わせると、心にも無い言い訳で、自分の判断を裁判所の判断にすり替えるという、裁判官の姑息さが浮き彫りになりました。

▲会社のリストラに歯止め▲

 原告4名は当然、この不当判決を不服として、2012年1月10日に東京高等裁判所に控訴しました。
 現在、労働裁判には逆風が吹いています。東京地裁のJALパイロット・客室乗務員の不当解雇争議では「整理解雇の4要件」の成立要件を曲解し、JAL側の言い分を一方的に採用するなど、最高裁判例を無視するという考えられない不当判決が出されました。
 IBM退職強要・人権侵害裁判で、原告4人と組合は、高裁において2008年に行われた退職強要の実態を明らかにし、その退職強要が会社の組織ぐるみの違法行為であることをあらためて証明するつもりです。
 この闘いの中で、現在、大規模に行われている業績改善プログラムや退職強要プログラム(割増金と就職斡旋)を会社の自由にはさせず、日本IBMで働くものの今後の雇用を守っていく所存です。 
 組合員だけでなく、社員の方々のご支援をよろしくお願いします。

「IBM中央団体交渉」報告

会社業績根拠開示せず
不当労働行為に抗議

 4月10日、26日に日本IBMとの中央団交を行いました。
 春闘要求回答では、GDPの諾否の事務手続については組合が提案することで合意しましたが、会社業績40の根拠については今回も開示しませんでした。
 PBC不当低評価、PIP強要では、該当組合員が新たに複数名出席し評価の撤回を求めました。また、不当労働行為に対して強く抗議しました。

◆会社業績40なぜ?◆

 2010年度は51であった会社業績が2011年度は40に低下している根拠を追及しました。会社は「財務諸表の詳細やその額の原因、および会社業績の根拠となるデータについて、開示できるものとできないものがあるため、精査した上で後程回答する」との返答にとどまりました。

◆GDP減額支払強行反対◆

 会社は「組合との合意を得ず、会社が決めた額で支払う」としていますが、組合は「会社の支払額は一方的であり、しかも減額(支払ゼロ)分も含むため、必ず組合との合意を得てから支払うべき」と強く要求しました。会社は「合意がなくとも会社決定額で支払うが、合意するまでの交渉は続ける」とするも「労使にとって最も良い支払方法を組合に提案してほしい」との回答もあり、組合は支払方法を提案することを伝えました。

◆不当低評価とPIPへ◆

 不当低評価の該当者が参加して抗議し、低評価撤回を要求しました。
 該当者は「目標をすべて達成しても相対で低評価になるのであれば特別に業務改善する必要はない」と意見を述べました。そして「正当な評価なら根拠を示せ」と要求しました。
 前回までに参加したことのある該当者は「訴えた内容について、会社は調査・確認し書簡で回答してきたが、その内容があまりにも事実とかけ離れている。虚偽を働いたのは、調査し書簡を作成した人事なのか、調査対象となった所属長らなのか?」と会社に対する強い不信感を表明しました。

◆不当労働行為やめよ◆

 組合は「PIPは減給・降格・解雇などの労働条件の一方的な不利益変更を明示しているため、労使間の協議事項となっている。ゆえに、組合の合意を得ずに、会社が社員、特に組合員に強要するのは、不当労働行為だ。」と、繰返し説明しています。しかし、PIPを強要される組合員が後を絶たないため、組合は不当労働行為を犯しているラインマネージャーと監督義務のある会社へ「不当労働行為の中止要請」を行っていました。
 これを会社は非難し「ラインによるPIP業務命令は撤回しない」との強硬な姿勢をみせました。
 組合は会社・人事がラインマネージャーの不当労働行為を組織的に指導していることに対して強く抗議し、断固阻止することを伝えました。

◆会社は虚偽の回答をするな◆

 出席した組合員からは、「前回の団交では、PIPはパフォーマンスを上げるためのものだと聞いた。しかし、ラインと話をしたところ、ILCは評価の対象とはならず、部下の承認は必要ない、との回答を得た何をもって評価するのか。しかも、会社回答では、1月25日のインタビューの内容は一切記述されていなかった」とし、もう一人の出席組合員は「講義文に対する会社回答について、事実確認はどなたがどなたに対して行ったのか」として、会社に対する不信感をぶつけました。

「レノボ中央団体交渉」報告

3月22日にレノボ・ジャパンとの中央団交を行いました。その席で、春闘要求に対しての会社回答がありました。

【春闘回答】評価確定前賃金交渉せよ!!

 春闘要求についてレノボ・ジャパンは「マイナス要因として昨年のハードディスクドライブの件があるものの、ビジネスはそれなりに順調に推移しているので全く昇給できないような状況ではない」と回答しました。
 年功型のNECの給与制度との2重制度については、「NECとのことについてはこの組合と交渉するべきではない」との差別的発言がありました。
 賃金交渉については、会社は個人業績評価の確定以降に応ずるとしていますが、組合は「評価連動の賃金では評価によって額が決定してしまうので、評価後に交渉したのでは、賃金交渉にならない」と評価前の交渉を要求しました。

◆人事異動の影響は? NECとの合弁で◆

 組合は社員の労働条件の不利益変更などを懸念し、NECとの合弁における大きな組織変更や人事異動について質問しました。会社は「工場については米沢へ移管された。今後は技術者の交流が始まる」と回答するも、人員削減などについての発言はありませんでした。

◆職場復帰勝ち取る◆

 上司のパワーハラスメントにより、不適切な業務に2年近く追いやられていた社員が4月から適切な業務に就くことになりました。組合は粘り強く交渉を続けて、ようやく会社がこれに応じ、実現することができました。

「IBM中央団体交渉」報告

【PBC問題】不当低評価撤回せよ
 3月21日に会社と、中央団交を行いました。
 今回の団交では、PBCで不当に低評価にされた社員が複数名出席し、低評価の撤回を求めました。また、組合活動妨害など不当労働行為に対して強く抗議しました。

 これまでの団交に引き続き、PBCにおいて不当に低評価とされた社員4名(1名は代理者)が出席し、強く抗議するとともに低評価の撤回を求めました。
 今回の主な不当評価は次の通りです。
・部門の責任を自分一人に負わされ低評価とされた。
・多くの実績があるにもかかわらずたった一つの小さなミスを取り上げて低評価とされた。
 さらに、部署内で自分だけが定期的な面談を強要されたり、評価面談の際に所属長から受けたパワーハラスメントなどについても、強く抗議しました。
 そして、「評価対象範囲、評価分布、評価基準」を明確に示すよう会社に求めました。

◆不当労働行為をやめよ!◆
◆そのためにはデータ開示◆

 前回までの団交から引き続き、組合は「組合幹部への不当低評価は組合活動への妨害行為であること」「労使で協議中のPIP強制実施は不当労働行為であること」を伝え「PBC評価とPIPの改善結果が労働条件の不利益変更に直結するにもかかわらず評価の根拠の開示要求に応じないのは不誠実団交であること」などを繰り返し伝えました。しかし、会社は「労働条件の不利益変更については組合と協議する」とするも「評価そのものは撤回しない」との姿勢でした。組合は今後も評価の撤回を要求していくことを伝えました。

PBC評価いいかげんな実態 
5月に低評価候補者指名

 現在、会社はPBC低評価者に対してPIP(業績改善プログラム)を強要していますが、そもそもPBC評価が公平、公正におこなわれているのでしょうか。組合は、いかに評価の中身がいい加減であるかを会社が作成した人事資料をもとに紹介します。
 この資料は、2010年の夏、組合に部門の人事戦略に関する資料が、匿名の人から提供されました。その内容は、リストラ実施の企てともとれるショッキングなもので、人員の削減実績や今後の予定数、メンタル疾患者数の推移、PBC評価の割合など多岐にわたっています。
 今回は、その中からPBCの評価付けそのものが公平、公正とは無関係におこなわれてきていることを紹介します。
 この資料には、PBC評価について一般職の詳細は書かれていませんでしたが、理事・執行役員については具体的に書かれていて一般職も同様と考えられます。

◆ボトム15%退職勧奨リストに◆

 まず、日本IBMの評価制度は相対評価です。理事・執行役員が20人いれば、ボトム15%の3人に低評価がつく計算になります。その資料では、驚くことに5月の時点で「理事・執行役員の人数比から、当部門で1名の低評価者を出さなければならない。」と論じていました。5月といえば、PBCの目標設定直後であり、評価期間の半分も過ぎていません。PBC評価がいかにいい加減であるかの証明です。
 さらに低評価候補者として「レッドサークル」に属するA氏、B氏、・・と具体的な名前も記載されていました。「レッドサークル」とは「エグゼクティブの退職勧奨リスト」です。ボトム15%に入った時点で、退職勧奨リストに載せられるということです。
 資料では、低評価対象者は「翌年2月に定年退職予定のC氏が良い」と結んでありました。
 確かに翌年2月に定年退職予定の社員なら、その社員の経済的損失も周囲の軋轢も少ないのでしょう。しかし本来の評価者でもない部門人事の人間が、PBC評価を5月の時点で決めるなど許されることではなく、評価の方法も問題です。
 この資料はPBC評価がいかに恣意的に決められているかを明確に示すとともに、会社のコスト削減目標のための人員削減計画にそって低評価の割合およびリストアップが個人業績とは関係なくおこなわれていることを証明しています。

◆証拠を閲覧制限に◆

 組合はこの資料をIBM退職強要・人権侵害裁判の証拠(甲56号証)として、東京地裁に提出しました。すると会社は在籍中の原告3名(木村団長は2010年5月に定年退職)と組合の委員長に対して「甲56号証は不正競争防止法でいう営業秘密であり、公開した場合、懲戒処分にする」と内容証明郵便を送付してきました。
 さらに東京地裁に対して、甲56号証の閲覧制限を申立ててきました。(注:日本の裁判は公開が原則であるため、証拠も一般の人が閲覧可能です。したがって提出された証拠を一般の人に閲覧されたくない場合は、今回のように「閲覧制限」を申立てる必要があります)
 それに対して、組合側弁護団は会社の閲覧制限の申立てについて「営業秘密を理由とする閲覧制限については相当でなく反対する」旨の意見書を提出しました。
 しかし東京地裁は昨年12月28日の不当判決と同時に、甲56号証が営業秘密に該当するとして閲覧制限を認めました。
 本来は、この資料をそのままお見せし、人事施策の裏側をなまなましく紹介したかったのですが、組合は甲56号証本体の公開は避け、「かいな」において、内容の引用に留めて、この記事にしました。

「IBM中央団体交渉」報告

不当労働行為やめよ!!
_PBC評価説明責任果たせ!!

2月28日に中央団交を行いました。組合は大岡委員長への恣意的なPBC低評価が不当労働行為であることを指摘し、強く抗議しました。
また、PBC評価は賃金と連動しているにもかかわらず、低評価者が納得できるような説明が全くなされていないため、組合は会社の説明責任を追及しました。

不当労働行為に抗議会社も認識

JMIU日本IBM支部・大岡中央執行委員長は、業務成果を上げているにもかかわらず、PBCで低評価とされました。組合はこれに強く抗議し撤回を求めています。
そして「労働組合の幹部であることを理由に不利益扱いすることは、労働組合法で禁止されており、このような理由で委員長を低評価としたことは不当労働行為である」と、組合は指摘し、強く抗議ました。
これに対し会社は、「(大岡委員長への低評価は)不当労働行為があるかどうかに直面している、というのはわかった。」と回答しました。

評価は賃金連動、ゆえに説明責任を果たせ

組合は「PBC評価は会社の主観的評価となっており、その評価が賃金に直結している。一方、労働法は賃金の改善や不利益変更の撤回などについて、労働者が会社に要求できることを認めている」ことを伝え、低評価については、本人や組合が納得するような説明責任が会社にあることを指摘しました。
さらに、これまで、PBC評価がどうのようにして「公平・客観・透明」に行われているのか、具体的な内容を追及しました。これに対して会社は、抽象的な一般論でしか回答をすることができませんでした。
今後も、組合はPBC低評価に抗議し、是正を求め、交渉を行います。

より広範にPIP実施! 組合へ早目の相談を!

 会社は例年にも増してPIPを実施し給与の減額調整や降格を強要してくる模様ですので、早目に的確な対応をする必要があります。
 会社は1月31日にラインを集めPIP(業績改善プログラム)説明会を開催し、2月27日には「2012年度のPerformance Managementについて」というPIP(業績改善プログラム)と減給調整についての発表をおこないました。すでに多数の相談が組合に寄せられており、今年は例年よりもはるかに大規模にPIPが行われている模様です。
 昨年かいな紙面で4回連載した「PBCを斬る」でPIPの問題点は紹介しました。PIP実施の狙いは、低評価された人に対してPIPを実施し、その目標を達成できなかった人に対して、減給、降格、解雇を行うためです。PIPはそのツールであり、改善の機会を与えたけれどだめだったという証拠とするためのものです。PIPはIBMだけでなく米国系総合情報サービス会社ブルームバーグなど外資系企業を中心に多くの会社で解雇を含むリストラの道具として使われています。

◆より広範に、随時に◆

 今までと違い、今回の発表で、直近の評価が3、4になった全員をPIPの対象者としたことや、昨年の就業規則改悪で、臨時減給が可能になったことから、今後はより多くの対象者にPIPを実施し、定期給与調整時に限らず随時減給される恐れがあります。
 また、発表をみると、PIPの本質を覆い隠し、さも減給や降格などからのがれるための救済処置であり、改善のための良いツールのように書かれています。おそらくラインも低評価された人に対してそのように話をするのでしょう。そもそも、低評価された人で納得している人はどのくらいいるでしょうか。IBMのPBC評価の仕組みは不明瞭で、2008年リストラ時に組合との団交で労務担当が発言したとおり、恣意的評価になる仕組みとなっています。このラインのさじ加減で決められてしまう曖昧な評価を前提に、減給、降格、解雇されてはたまったものではありません。
 では、なぜこの評価の仕組みは、公平性、納得性のあるものに改善されないのでしょう。
 IBMの経営戦略で、成長国である日本にはUSからの投資は期待できず、売り上げが伸びない中でも利益は求められ、その中心となる人件費削減のためには、今の仕組みは都合が良いのです。どのくらいコストを削減するか、そのためにどの程度人員削減をする必要があるかというのを割り出し、それに合わせて低評価者の割合が作られ、人選がおこなわれます。
 ですからPBC目標を達成してもよい評価がつくとは限らないのです。相対評価ですからいくらでもこじつけが可能です。最近組合に加入したり相談を受けた人の状況を見ると、今まで低評価をもらったことのない人が低評価され思い当たるのは年齢くらいしかないというケースもありました。
 会社は否定していますが、以上のことは、これまでの多くの方の実態に基づくものです。会社は2015年の1株当り利益20ドル達成に向けてソフトウエア買収などに200億ドルを投資するとしています。
 買収による人員増を抑えるためにも、ますます能力主義を口実にした人員削減に拍車がかかるのではと懸念されます。

◆すぐに組合へ相談を◆

 所属長にPIPの話題を切り出されたら、PIP開始を承諾せずに、すぐに組合に相談してください。すでに多くの人が組合の門戸をたたいています。一人では闘えません。会社は過去に繰返したリストラでのノウハウを蓄積しているのみならず、他企業の経験をも参考にしています。
 組合に入り皆で力を合わせれば、一方的な労働条件の不利益変更と闘うことができます。

予断と偏見に満ちた異常な判決

―日本IBM人権侵害裁判判決批判 ―

◆裁判所が死んだ日◆

昨年12月28日、東京地方裁判所民事第19部(渡辺和義裁判官)において日本IBMの労働者4名(全日本金属情報機器労働組合・JMIU組合員)が申し立てた損害賠償請求事件の判決がありました。判決の内容は「原告の請求をいずれも棄却する」という原告の全面敗訴。原告はただちに東京高裁に控訴しました。
この事件は日本IBMが原告らに対して行った退職勧奨が労働者の基本的人権を侵害する違法なものであるとして損害賠償を請求したものです。判決は、退職勧奨の対象となった社員が拒否の意思表明した場合に会社が引き続き説得活動をしたとしてもそれが社会通念上逸脱したといえない限り当然許容できるものでありただちに違法とはいえないとしました。労働者への退職勧奨を許容・是認するきわめて不当な判決です。これまでの裁判例では、対象者の自由な意思決定を妨げての過度な勧奨は違法な権利侵害にあたるとしています。判決はこうした裁判例をも無視するものであり、「裁判所が死んだ」と言わなければなりません。

◆3000人を対象にした大リストラ◆

この裁判の背景には日本IBMが08年年末に行った大規模なリストラがありました。IBMが当初、会社そのものが主導するリストラ計画の存在すら否定しましたが、内部告発によって秘密裏のRAプログラムと呼ぶリストラ計画が存在することが発覚しました。
RAプログラムでは人員削減の目標を1万6千人いる従業員のうち1300人を退職させるとし、そのため「予定数の達成がリーダー(管理職)の結果責任」と強調されていました。その結果、管理職による執拗な退職強要が3000人を対象に行われたのです。
原告の場合、繰り返し退職の意思がないことを表明しているにもかかわらず、執拗に、面談やメールによって「業績が悪い」「スキルがない」「会社に貢献していない」「いつまで働く気があるのか」「(この会社では)60歳まで働ける人はありえない」などと迫ってきました。なかには、ペットボトルを振り回したり、机をがんがんたたいたり、激しく足を踏み鳴らすなど威圧しながら退職を迫る上司もいました。原告らは退職強要を受けるなかで勇気をもって労働組合(JMIU日本IBM支部)に加入し退職強要は止まりました。しかし、労働組合加入に踏みきれなかった労働者は泣く泣く職場を去らざるをえなかったのです。また、会社がうつなど精神疾患を患っている人をねらい撃ちにして退職強要の対象にしたため、病状をさらに悪化させてしまった人が続出しました。この時期にはたくさんの仲間が組合に加入し、その多くが退職強要のあまりにもひどいやり方に精神的にも疲れ果て本当は裁判に訴えたいという気持ちがあるにもかかわらずあきらめざるをえませんでした。4人の原告は、自分たちは退職を免れたが、受けた精神的苦痛は甚大であり会社は絶対に許せないという気持ちととともに、二度とこのような悲惨なリストラを繰り返してはならないという思いで裁判提訴に立ち上がったのです。

◆異常な違法性の判断基準◆

裁判では、このような退職強要が違法なものであるかどうかが争われました。
判決はまず、リストラを断行した2007年の経常利益が1654億円だった事実はまったく無視したうえ、「従業員がみずからの業績を向上させる努力を怠らない(いいかえると業績の悪い社員は雇わない)」というIBMの企業文化をいっそう促進するために「RAプログラム」は必要だったと認め、退職金割増などの退職支援が他社に比べて退職後の将来を充実していると絶賛しました。また、目標の3倍相当を対象に退職強要を迫ったことや成果主義での低評価者を対象にしたことを、紛争リスク回避のための合理的措置として肯定的に評価しました。そのうえで、退職勧奨の違法性の基準について以下のように示しました。

  • ①退職勧奨は労働者の自発的な退職意思の形成を働きかけるための説得活動であり、応じるか否かは労働者の自 由な意思に委ねられているので、使用者が、退職勧奨に応じるよう説得することは何ら違法なものでない。
  • ②退職するつもりはないと意思表示している労働者に対し「なぜか」などと質問することを制約すべき合理的根拠はない。労働者が「退職しない」と言ったとしても、それをもってただちに退職勧奨を中断する必要はなく、引き続き「再検討を求めたり翻意を促すことは、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱した様態でなされたものでない限り、当然に許容される」
  • ③退職勧奨の過程で「戦力外と告知された当該社員が衝撃を受けたり、不快感や苛立ち等を感じたりして精神的に平静でいられないことがあったとしても、それをもって直ちに違法となるものではない」

この異常な判断基準をもって退職強要に違法性があるかどうかを判断するというのですから、これでは、拳銃を突きつけるほどのことがしないかぎりどんなことをやっても違法性はないという結論となるでしょう。実際、判決は4人の原告らに行われた退職強要について、「退職勧奨行為が社会通念上相当な範囲を逸脱する違法性はない」と結論づけたのです。

◆判決の問題点◆

判決の問題点は以下のとおりです。
第一に、判決が著しく予断と偏見にもとづく事実認定と判断を行なっていることです。判決は、被告の主張をそのまま引用する形で「戦力外」と呼び、使用者から「業績・評価が悪い」「仕事ができない」とみなされ「戦力外」とレッテルを貼られた労働者は、使用者から繰り返しの退職勧奨を受けても当然という考え方についても、労働者を見下すような予断と偏見に満ちています。また、事実認定についても、被告会社の主張はまったくの検討なしに受け入れているのに対し、原告(労働者)側の主張は、これもほとんど説明なしに事実上否認されています。
第二に、成果主義において低評価をつけられた労働者に退職を迫ることを認め、労働者の雇用をまもる経営者の義務(責任)を免罪していることです。労働契約法16条にあるとおり使用者の解雇権の濫用は厳しく規制されています。それは労働者の雇用安定は社会的に要請されているものであり、使用者には労働者の雇用をまもる責任があるからです。判決はこうした労働法制の原則から著しく逸脱しています。
第三に、判決は、資本と労働の不均衡な関係(資本家・使用者は労働者に対して圧倒的に強い立場にある)という資本主義社会の現実をまったく無視していることです。すなわち、渡辺裁判官の頭のなかでは、職場での使用者と労働者は対等な関係にあるのでしょう。だから、退職がいやなら応じなければいいのだから、その過程で、使用者側が少々乱暴してもかまわないと思っているのです(法廷でこの裁判官は退職勧奨を「タフな交渉」と表現しました)。しかし、現実は、職場のなかの使用者と労働者の関係は対等ではありません。そればかりか、使用者は労働者に対して絶対的な権力をもち、労働者はどんな業務命令にも応じなければなりません。また、労働者にとって失職は生活の糧を絶たれることです。そうしたもとで、労働者が使用者から「おまえは業績が悪い」「会社に貢献していない」「早く辞めたほうがいい」などと恫喝まがいの言葉を浴びせられることがどんなに精神的な苦痛となるかが理解できないのです。しかし、現代の労働法は、この資本と労働の不均衡を前提として、だからこそ、労働者を特別に保護しなければならないという立場にたっています。渡辺裁判官はこの初歩的な原則をすっかり忘れているようです。
第四に、判決は、これまでの最高裁判例を含む裁判例や行政判断からも著しくかけ離れていることです。最高裁判例などでは、①執拗で繰り返し行われる半強制的な退職の勧め、女性差別など法令に反する退職勧奨、ことさらに侮蔑的な表現を用いる、懲戒処分をちらつかせるなど退職勧奨の域を超える退職強要、退職の勧めを拒否した者への不利益取り扱いは違法としています(下関商業高校事件 最一小判昭55.7.10など)。また、行政判断では、2000年2月の神奈川労働基準局指導が、退職勧奨が違法となる判断として、①出頭を命ずる職務命令を繰り返す、②あらたな条件提示などもなく勧奨を続ける、③勧奨の回数や期間が通常必要な限度を超える、④精神的苦痛を与えるなど自由な意思決定を妨げる言動、⑤立会人の認否、勧奨者の数、優遇措置の有無などに問題がある場合をあげられています。今回の判決がこれら過去の裁判・行政の示した内容からも著しくかけ離れたものであることは言うまでもありません。
いま、日本では、まともな労働組合のない職場を中心に、同じような退職強要がひろがっています。とくに最近、顕著に増えているのが成果主義による低評価を口実に退職強要・解雇です。こうした問題の背景には、財界・アメリカが強く求めている「解雇の自由化」があります。すなわち、労働者の解雇に規制はいらない、自由に労働者を解雇できるようにしろという要求です。今回の判決はそうした流れのなかにあることを見ておく必要があります。それだけに、東京高裁ではなんとしてもこの判決を是正させることが求められています。

(JMIU書記長 三木陵一)

2012年春闘始まる

三つの重点を軸にした要求書を提出
いよいよ、2012年春闘が始まりました。わたしたちのたたかいは、「労働者のくらしと雇用を守り、企業の将来展望を開く」ことを目指しています。このことは、すべての人が安心して暮らせる社会をめざすことに通じるからです。
組合は、今年の重点要求として、①「すべての仲間の賃上げを行え」②「すべての仲間の雇用を守れ」③「業績改善プログラム・降格・減給をやめろ」を掲げ、その要求を2月23日に会社に提出しました。

賃上げをしない、させない成果主義

会社は、2005年10月3日発表の「人事制度の改革」発表以来、徹底した成果主義を推し進めてきました。当初「がんばれば賃金が上がる」という幻想をもった人も多かったと思います。組合は、従業員の賃金が抑えこまれる危険性があるとして機関紙で警鐘を鳴らしてきました。そして今それが現実となり、多くの従業員は成果主義に不満を感じ、怒りをもっています。それは、従業員の半数しか昇給しない仕組み、ごく一部の人を優遇する賞与制度など、従業員に利益を還元しようとする会社の姿勢がないからです。いま、会社が行っていることは「賃上げをしない、させない成果主義」なのです。その結果、会社の「年齢別保障給」を下回る社員が多く出てきたため、その制度を廃止するまでに至っています。

「すべての仲間の賃上げを行え」

組合の賃上げ要求に対し、会社はまったく応じようとしていません。春闘アンケートを実施して明確になったことは、毎月の支出で7万円以上の赤字を抱えている従業員が多く存在することです。これは、会社がベースアップの賃上げを実施していないからです。そこで、今年の賃上げ要求として、2006年からの1万円のベースアップと今年度の賃上げを加え、「一律10万円の賃上げ」を要求しています。これは決して高い要求ではなく、現実的なものです。7年間も昇給がない方もいます。お子様の教育費に支出のかかる年代の方もいます。更にバンド7の給与レンジ下限に達していない方、裁量労働勤務制のもとにサービス残業を強いられている方など、会社が労動者から搾取している賃金の還元を実現させる要求です。

「すべての仲間の雇用を守れ」

会社は、2015年ロードマップを実現するため、大規模なリストラを実施しようとしています。以前は、その対象者をボトム10(%)といいましたが、それがボトム15(%)になり、そして今年はボトム30(%)、すなわち5000人が対象になろうとしています。そこから、会社が目指している人員削減計画が推測できます。このような会社の横暴を許さず、従業員の雇用を守らなくてはなりません。

「業績改善プログラム・降格・減給をやめろ」

成果主義は、労働者の賃金を使用者の一方的な評価によって個別に決めるというものです。そして次々に改悪されていくのが特徴です。したがって、結婚、子育てなど生活費が増大してもそれが賃金に反映されません。それどころか、低評価を口実にした減給や降格を行っています。このように「賃金の生計費原則」を真っ向から否定する業績改善プログラム・降格・減給をやめさせなければなりません。
組合は、今年の重点要求項目を軸に、100項目以上の要求を会社に提出しています。今後、その要求と回答を機関紙、組合ホームページを通じて公開していきます。

退職強要・人権侵害裁判=続報

退職強要許す異常な判決

東京高裁に控訴

2011年12月28日、東京地方裁判所民事19部の渡邉和義裁判官は、JMIU日本アイビーエム支部の組合員4人が日本IBMを相手取って提訴した退職強要・人権侵害裁判において、全面棄却の判決を下しました。
判決内容は、社会通念や常識に反し、裁判官個人の主観の入った、証拠に基づかない結論ありきと思える不当なものであるため、原告は、そうそうに東京高裁に控訴しました。

◆会社と社員が対等?◆

渡邉和義裁判官は、会社と社員が対等の力関係であることを前提にし、退職強要を、「タフな交渉である」と言い、判決文では「説得活動」としました。また、希望退職者募集は一切なく、隠密に行われた事実上の指名解雇であるにも拘わらず、これらの証拠に則った事実を無視し、日本IBMの「成績下位10~15%の労働者を追い出す」という企業文化(ハイパフォーマンスカルチャー)を容認し、人員削減は経営の自由としました。
企業利益の最大化のための人員削減であるにも拘わらず、退職強要された社員が会社に残るのは悪だと言わんばかりの判決内容です。このような「判決」は、公平・公正さが最も求められる裁判所に対する信頼を大きく揺るがすものであり、高裁での是正が絶対に必要です。

◆地裁判決是正を◆

原告側は2012年1月10日に東京高等裁判所に控訴しました。もし、高裁が、労働者と労働組合に対するあまりにも偏見と敵意に満ちたこのような判決を是正できないとすれば、「裁判は死んだ」と言わなければなりません。
このままでは、あまりにも経営の自由を認めすぎるものであり、企業の中は無法地帯になることは明らかです。東京高裁に対しては、あらためて証拠、証人を採用し、審理を尽くし、地裁判決を是正するよう要請します。

上記の会社利益と社員数のトレンドを比較したグラフは、会社が行った人員削減は経営悪化を立て直すために行われたのではなく、十分な利益を出している会社がさらに利益を出すために行った、強欲な人員削減であったことを示しています。

 

異常な判決の内容

●IBMの特異な企業文化(ハイパフォーマンス・カ ルチャー)をそのまま受け入れ、経営的必要のない退職勧奨を正当化した。法的な裏付けのない判断をした。
●優遇された退職条件があれば、退職強要の条件が緩和されるとした。
●労働者の「退職しない」という明確な意思表示にも「会社の認識」というハードルを作った。 意思表示が明確にされた後でも「翻意する可能性」があり、会社の説得活動が可能であるとした。
●労働者と経営者(上司)という「支配された特殊な関係」の認識が無く、圧倒的な力を背景にした会社による「タフな交渉」を是とした。
●裁判官の推測により、密室において上司が不当な発言をするはずが無いという一方的な判断をした。
●裁判官は退職強要を断った報復としてPIPが行われた事実を切り捨て、推測により不当行為が無かったという判断をした。
●裁判官は証拠として提出した退職強要面談の録音内容を歪め、原告に不利な解釈をした。
●退職強要の結果、体調を崩して呼吸困難になり、点滴を2日間に渡って受けた原告の被害を裁判官はまったく取り上げなかった。
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